相談例・解決例
2016年04月22日更新 欠陥住宅コラム
~損壊建物を解体撤去する前に~(後編)
【解体・撤去前に記録化すべき重要なポイントは】
~損壊建物を解体撤去する前に~(前編)の続きです
後編では、建物の種類ごとに解体・撤去前に記録化すべき重要なポイントを解説していきます。
なお、専門的な内容ですので、建築に詳しくない方が、倒壊・損壊した建物をしっかり見て、重要なポイントを外さずに記録化するのは、容易なことではありません。
できれば、これまで欠陥住宅の調査に携わってきた建築士が、これまでの経験を踏まえて、写真を撮り、図面に残すことが望ましいのです。
1 木造住宅の場合
木造は農家や蔵の様な古くから立っている建物に使われている伝統構法、大工・工務店が柱と梁で作る在来軸組構法、輸入住宅やハウスメーカーが作る枠組壁工法(2×4構法)、大手ハウスメーカーが部材を工場で作っている認定工法、山荘などに使われているログハウスの丸太組構法に分かれているので、工法の違いが分かる図面が必要となります。
図面としては正確な情報が記録されている確認申請書があるのが一番ですが、少なくとも平面図は手元にほしいところです。残念ながら図面が見当たらない場合は各階の間取り図を書き残してください。間取り図を作るにあたり壁の位置と窓や仕切りの開口の大きさをできる限り正確に描くようにしましょう。
構法の違いによって、欠陥の原因となる要因が異なっていますので、証拠として残す写真も異なりますが、まずは倒壊した建物がどちらに倒れたのか分かるように建物正面側と側面側との2方向セットで倒壊した建物各所を写真で残していくようにしてください。
伝統構法は現状の建築基準法からすると耐震改修を必要とするものになるので、今までに維持管理が十分にされて来たかどうかが問われることになります。
白アリに食われていない、雨漏りや漏水により木の腐れがないことが前提で、違法な改造がされている箇所の写真記録を残します。
在来軸組工法は筋交いの入った耐力壁が作られています。その筋交いの上下の両端には金物により柱と土台、梁に固定されていますので、金物がビスや釘にて固定されていない箇所、建物の4周にはホールダウン金物が必要ですが見当たらない場合の確認写真を残します。
枠組壁工法(2×4構法)は枠に構造用合板を釘打ちにて止めていますので、釘の打ち込み間隔や釘の太さが問題となります。合板の厚みも決められていますので指定のもの以上であるか確認できないといけません。これらの写真はメジャーを当てて寸法が確認できるようにとりましょう。
認定工法であれば、とりあえず破壊している部分を近景、遠景等のいろんな写真をできるだけ多く残してください。
2 鉄骨造建物の場合
鉄骨造の倒壊原因は鋼材の大きさが図面と異なるものが使用されている場合と鉄骨の各所に行われている工場溶接や現場溶接での溶接個所の不良により仕口部分の座屈や破断が起きることが多くなっています。またコンクリート柱脚部の鉄骨固定の仕方の不良が見られます。
建物全体の倒壊状況の記録の残し方は木造と同じ写真の撮り方で残してください。
使用されている鋼材の寸法が読み取れるように各部材ごとにメジャーを当てた状態で写真が残せるのが良いでしょう。
特には溶接個所で破断している個所の全体像と詳細で見える接写の写真、鋼材の変形している場所が分かる写真と変形の状態が分かる接写写真が必要となります。
3 鉄筋コンクリート造建物・マンションの場合
マンションの場合は管理組合(管理会社が管理していることも多い)が確認申請図書等の図面は保管しているので設計上のことは直ぐにわかります。
鉄筋コンクリート造の場合、倒壊をもたらす形が目に見えるものとしてコンクリートのひび割れやコンクリートの圧潰現象が出ていますので、この現象がどの位置にあり、どの方向に(水平なのか、斜めなのか、垂直なのかわかる程度に)入っているのか、写真とともに図面に記録することが必要です。
現在作られている鉄筋コンクリート造のマンションでは構造スリットが構造架構(柱と梁で組まれた部分)と壁とのつながり部分に設置されているものがほとんどですので、構造図面通りに構造スリットが設置されていることを現物のマンションで確認しておきましょう。
もしも、確認できなければ写真記録と現物保存を考えてください。
以 上